東南アジア・タイで必要とされる製造業の見える化とその効果

東南アジアで必要とされる製造業のIT化

東南アジア・タイの製造業の課題

日本国外の中でも日系製造業の進出数が中国・アメリカ等に次いで5番目に多いタイ。
宗教や国の文化に大きな差も無く、親日国という事もあって導入の障壁がかなり低いことで知られている。一方で、現場担当者の声は穏やかではないこともしばしばである。

「日本の感覚ではあり得ないレベルでタイでは仕事の精度が低い(ミスの頻度が高い)」
「1日の仕事の半分くらいは上がってきた記録を疑うこと」
「ミスや異常が起きてもなかなか報告が上がってこない」
「これだったら全部自分でやったほうが早い・・・」
現場のタイ人オペレーターに割り振っている仕事が上手く回らないことによる悲鳴だ。

日本での仕事は、優秀な日本人によって支えられていたとありがたみに気づくものの、嘆いているばかりでは業績は向上しない。
生産の品質・効率をいかに安定させるか、いかに向上させるかを考える上で、「属人的要素をいかに省くことが出来るか」が重要となる。

管理者として工場のオペレーションを改善していくには、まず現状を正確に把握する必要がある。
設備であれば、どの機械がどういった状態でどれだけ動いたのか?
人であれば、誰が、いつ、何を、どれだけ行ったのか?

現状、それらを把握するために現場ではあらゆる項目を手書きでの記録で残している事が多い。その手書きによる記録を自動化することによって、上記の問題を解決できる事例を紹介する。

今の設備・システムを変えることなく低コストにITを導入

【事例】機械設備の稼働管理によるオペレーション改善(電子部品製造O社/従業員規模100名前後)
電子部品製造のO社は金属材料を仕入れ、切断・加工のち組立工程を行っており、切断・加工工程は機械により大半が自動化され、手作業による組立工程へと渡している。
今回、IT導入による現場の見直しを行うのは切断・加工工程だ。

■現状の課題
本来は全て機械の横に置いた記録シートに下記のような内容を書き込んでもらうように徹底している。
「○○時に設備異常が発生し、原因は△△だった」
「今日は機械Aを5時間稼働させ、段取り替えは20分だった」
「今日1日で製品XXを650個生産した」など

しかし、集計をしてみると日本人管理者としては精度が低く感じる記録となっており、期待している歩留まりまで効率を上げるには、どこに手を付けたら良いのかが見えてこない。
現場で起きているのは記入漏れや記入ミス、そして実際の数字とは異なるざっくりとした記録だった。
「機械Aの段取り替えをしている時に機械Bが材料切れを起こし、放置する時間があった」
「復旧作業第一のため、停止要因、時間など記入漏れが発生する」

特に多工程持ち、多台持ちの人員配置を行っているためなおさら手一杯になってしまうのが現状だ。さらに、記録シートへの手書きから、パソコンへの入力という手順を踏んでいるため、手書きのミス、パソコンへの入力ミスという間違いが起きる可能性を二重に含んでいる。

そのため、これらの情報そのものを自動的に取得する方法として機械稼働モニタリングシステムを導入した。

■導入したソリューション
このシステムは専用の機器を機械設備に取り付け、機械から取得可能な情報を自動的に取得・集計するものとなっている。
集計された情報は、グラフ表示やレポート集計、工場見取り図上での各設備のモニタリングまで可能な仕様となっている。

今回取得したい情報は既に機械が信号として発信しているものに全て含まれている。
稼働情報に関してはタワーランプの信号を取得。さらに今回の設備はOK・NG判定まで機械が行うことが出来るので、その信号も取得することで生産数量も併せて把握する仕様となった。

例:
<タワーランプ>
緑:正常稼働
赤:異常停止
黄:材料切れ

<生産数量>
・OK品数量
・NG品数量

システム導入により、今まで手書きによる記録で得ていた情報のうちかなりの範囲が、ミス無く自動でリアルタイムに取得できるようになった。さらに、「5分以上黄色ランプが続くとアラートを出す」などの設定を加えることで、エラーや故障などのトラブルへの対応を迅速に行える。PCだけでなくタブレット、スマートフォンでの閲覧も可能なので現場作業員にも持たせるようにしている。

さらに、機械の稼働状況や生産数量をリアルタイムに把握することで、タイ人スタッフの意識改革にもつながった。
これまでは稼働状況が見れないため、自分の作業が全体の稼働にどれくらい影響を与えているかがわからず、作業の進捗も順調なのか遅れているのかが見えていなかった。しかし、見える化を行ったことで、自分の作業の状況をリアルタイムに把握することで作業に対しての責任を持ち、自発的に目標達成に向けた努力をするようになったのである。

■工数(コスト)の削減以上に現れた効果
1.手書き作業の軽減→工数(コスト)の削減
2.ミスや漏れのない記録→記録精度の向上
3.リアルタイムな情報取得→トラブル対応の迅速化
4.機械の停止要因の見える化→オペレーション改善の指標

導入することで見えてきた進展

低コストかつ現状のオペレーションを崩すことなくスタートしたことによって、スムーズな導入が可能になったのも今回の大きな特徴だ。
データとして「見える化」された現場設備の稼働情報に対して次の一手も見えている。タブレット入力システムの導入と作業者情報のリンクだ。

O社は少量多品種での製造に対応しており、管理対象となる項目も多い。
タブレット端末を活用することで、今セットしたワークがどの製品なのかを稼働情報に結びつけて記録することが可能になる。さらにエラーや故障が起きた際も、停止要因をタワーランプの情報以上に細かく記録でき、オペレーション改善の余地が広がる。

加えて、タブレットにログイン機能を持たせ、人の情報(作業者ID)を記録に結びつけることで、誰が、いつ、何を、どれだけという情報が取れるようになる。
これによる効果はトレーサビリティーの推進、作業者の評価、さらには作業者自身の責任意識の向上といった効果が見込まれる。

これまで見えていなかった情報の「見える化」が進んだことで、どこをどう改善すれば効果が出るかという課題が顕在化するようになった。
人の管理が難しく各個人のパフォーマンスが安定しない東南アジアだからこそ、属人化しないオペレーションの構築が必要となる。
低コスト化したIoTはその可能性を大きく広げている。

【お問い合わせ】
ネクストインダストリー株式会社 “タイ製造業にIoT導入を支援”
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